従業員へストレスチェックを
内山公認会計士事務所の内山でございます。
今月も顧問先様をはじめとしたお客様へ向けて税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説していきたいと思います。
個人的に感じることですが、今年(2025年)になって「カスハラ」という言葉を多く見かけるようになりました。
皆さんもご存知カスタマーハラスメント。要するにお客様からの暴言や無茶な要求等を差しますが、こういった物に「企業としても毅然とした態度を取りますよ!」という表明や発表も同じように目立った年でした。
それだけ世の中ストレスをためている方が多いということですが、自社の従業員をストレスから守るのも経営の一つと言えます。だからこそストレスチェックというものがあるのですが、常時50人以上の事業場に義務付けられていた本制度が、2025年5月に法改正が成立し、従業員50人未満の事業場にも義務化が拡大される見込みとなりました。
施行は公布から3年以内とされており、遅くとも2028年5月までには小規模事業場でも実施が必須となります。
そこで2025年最後のコラムでは「従業員へストレスチェックを」と題し、中小企業が取り組むべきストレスチェックについて解説して行きたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。
目次
- ○ 義務化拡大の背景にある“働き方の変化”
- ○ ストレスチェック制度の目的
- ・ストレス要因の“見える化”が最大のメリット
- ○ 小規模事業者に求められる実務対応
- ・産業医がいない小規模事業場は外部委託が有効
- ○ ストレスチェックの導入が会社にもたらす効果
- ○ 今回のまとめ
義務化拡大の背景にある“働き方の変化”

日本企業の96%は従業員50人未満の小規模事業者です。したがって今回の法改正は「大企業向けの制度」ではなく、全国のほとんどの事業所が備えるべき大きな制度変更と言えます。なぜこのような制度変更になったかと言うと、厚生労働省が公表した2024年度の精神障害労災請求は3,780件と過去最多を更新し、支給決定は1,055件と初めて1,000件を超えたという実態があるのです。
カスハラ・パワハラの増加、人間関係の悪化、業務の複雑化など、現代の職場はストレス要因が多様化しています。これらの背景から、国は企業規模を問わず従業員のメンタルヘルス対策を強化する必要があると判断したのです。
ストレスチェック制度の目的

ストレスチェック制度は、単なる質問票への回答ではなく従業員が自分のストレス状態に気づき、早めの対処につなげることを目的としています。体の健康診断と同じように、心の健康状態を定期的に確認するための制度と考えると理解しやすいでしょう。
この制度の中心となる考え方は「一次予防」、つまり不調が起こる前に気づくことです。厚労省のストレスチェック総合サイトでも、この一次予防の重要性が強調されています。
ストレス要因の“見える化”が最大のメリット
ストレスチェックでは、心理的負担の度合いに加え、職場環境がストレスにどのように影響しているかを分析できます。
たとえば、
温度管理(暑さ・寒さ)
照明の明るさ
騒音
机や椅子などの設備の不適合
といった一見すると小さな違和感も、積み重なれば心身に大きな負担を与えることがあります。
こうした“見えにくいストレス源”まで把握できる点が、制度の大きな特徴です。
小規模事業者に求められる実務対応

今回の法改正により、規模を問わず事業者はストレスチェック実施体制を整える必要があります。対象となるのは正社員だけでなく、パート・派遣社員・契約社員など業務に従事するすべての従業員です。
企業には「実施義務」がありますが、個々の従業員が受けるかどうかは任意です。また、結果は本人の同意がない限り企業には開示されません。
これらを踏まえると、制度運用には適切な管理体制が欠かせません。
産業医がいない小規模事業場は外部委託が有効
小規模事業者では産業医を配置していないケースが一般的です。
そのため、
ストレスチェック専門機関
地域産業保健センター
社会保険労務士
などの外部機関を活用する方法が現実的です。
厚労省も中小企業向けに「外部委託を活用したストレスチェック実施」を推奨しており、専門機関を活用することで負担を大幅に軽減できます。
ストレスチェックの導入が会社にもたらす効果

ストレスチェックと聞くと「義務だから対応する」という印象を持たれるかもしれません。しかし、実際には会社経営にとって大きなメリットが存在します。
従業員のメンタル不調は、業務効率の低下、休職・離職、人材不足など、企業の基盤に直接的な影響を及ぼします。とくに小規模企業では、一人の退職が組織全体を揺るがすことも珍しくありません。
ストレスチェックの活用により、従業員の不調を早期に発見し、適切に対応することで、結果として離職率の低下や生産性の向上につながります。
また、「従業員を大切にする企業」という評価は採用面でもプラスに働き、長期的な会社の成長基盤を強化することにもつながります。
身体の健康診断と同じように、ストレスチェックは会社にとって欠かせない「心の健康診断」と位置付けるべき時代になりつつあります。
今回のまとめ

ストレスチェック制度の義務化は、小規模事業者にとって新しい負担に見えるかもしれません。しかし、その本質は従業員の心の健康を守り、企業の成長を支えるための土台を整えることにあります。
適切な制度運用は従業員の安心感を高め、結果として会社の安定経営にもつながります。制度導入に伴ってキャッシュフローにご不安がある場合や、制度運用に対するご質問などがあれば、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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