インボイス制度スタートから二年
内山公認会計士事務所の内山でございます。
今月も顧問先様をはじめとしたお客様へ向けて税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説していきたいと思います。
令和5年10月1日に導入された「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が始まってから、2年が経ちました。導入当初は制度自体への理解や準備、取引先との調整などでバタバタとされた方も多かったかと思いますが、この2年間で事業者の皆さまにも少しずつ浸透してきたのではないでしょうか。
とりわけ、制度導入を契機に「免税事業者」から「課税事業者」に転換された方にとっては、消費税の納税義務が発生するだけでなく、帳簿の整備や請求書の発行、実務上のルール変更など大きな転換点を迎えられたことでしょう。
また、すでに課税事業者であった皆さまにとってもインボイス制度への対応は「既に済んだこと」ではありません。帳簿の保存要件、取引先の見直し、システムの改修、さらには電子帳簿保存法など、引き続き注意すべき点は多くあります。
そこで今回のコラムでは、インボイス制度の目的や概要を整理しながら、実務対応の再確認ポイントや活用できる補助制度をご紹介いたします。
目次
- ○ インボイス制度の概要とその背景
- ○ 課税事業者となった方に求められる実務対応
- ○ すでに課税事業者だった方にも求められる対応
- ・適格請求書の記載要件への適合と取引先への確認
- ・電子帳簿保存法への連動対応
- ○ 活用できる補助制度
- ・IT導入補助金(インボイス対応類型)
- ・小規模事業者持続化補助金(インボイス特例)
- ・補助制度と一緒にチェックしたい実務対応5つのポイント
- ○ 今回のまとめ
インボイス制度の概要とその背景

インボイス制度は、消費税の「仕入税額控除」を適正に行うために導入された新しい請求書保存方式です。これまでは仕入先が免税事業者であっても仕入控除ができていましたが、制度開始以降は、初期の経過措置期間を除き「適格請求書(インボイス)」がなければ仕入控除は一切認められなくなりました。
制度は軽減税率の導入によって複数税率が併存するなかで、税率ごとに明確に区分された請求書が必要になったことが背景です。つまり、誰が・どの税率で・どれだけの取引を行ったのか? を明確に記録することが求められるようになったのです。
インボイスには登録番号、取引日、品目、税率ごとの金額と消費税額、取引先の氏名など、法令で定められた記載事項が必要であり、それらの情報が記載された請求書・領収書を保存して初めて仕入税額控除が可能になります。
課税事業者となった方に求められる実務対応

制度導入をきっかけに課税事業者となった方にとっては、これまで納税義務のなかった「消費税」の取扱いが最も大きな変化です。受け取った消費税は「預かり金」として、年度末や四半期ごとに納税する必要があります。
たとえば年間売上が税込1,100万円で、仕入や外注費などにかかる消費税が70万円だったとすると、差額の30万円が納税額となります。以前はその30万円を自由に使えていたかもしれませんが、今後は確実に納税資金を確保する必要があります。
また、請求書の発行ルールが変わったことで登録番号や税率ごとの区分記載が求められるなど、経理業務全体にも見直しが生じています。経理ソフトや請求書フォーマットが制度対応しているか、日々の業務に負担が出ていないかなど細やかな確認が必要です。
すでに課税事業者だった方にも求められる対応

「私はもともと課税事業者だから関係ない」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、すでに課税事業者であっても、次のような点について注意が必要です。
適格請求書の記載要件への適合と取引先への確認
従来の請求書や領収書が、制度上の要件をすべて満たしているか再確認が必要です。記載漏れや不適切な様式は、仕入税額控除の否認リスクを生じさせます。
また、これまで問題なかった取引先がインボイス未登録であった場合、その仕入れに対する消費税控除が段階的に縮小されています。とくに経過措置終了後の影響は大きいため、早めの対応が求められます。
電子帳簿保存法への連動対応
電子取引(メール添付やクラウド請求書など)については、電子帳簿保存法による保存要件にも適合させる必要があります。
インボイス制度と合わせて見直す良い機会です。
活用できる補助制度

インボイス制度への対応として活用できる補助制度をご紹介します。
特に新たに課税事業者となった方は使いやすい制度が多く存在しますので、自社に該当するものであれば積極的に活用して行きましょう。
IT導入補助金(インボイス対応類型)
クラウド会計や請求書発行ソフトなど、インボイス制度対応のデジタルツール導入に対して、最大350万円(補助率3/4)の補助が受けられます。
小規模事業者持続化補助金(インボイス特例)
新たに課税事業者となった方が行う制度対応や販路開拓の経費(広告宣伝、業務改善など)について、上限100万円、補助率2/3で支援されます。
補助制度と一緒にチェックしたい実務対応5つのポイント
以下にインボイスへの適応を図るためのチェックポイントとして5つを上げました。自社で対応できているかも含め確認し、参考にしていただければ幸いです。
・請求書テンプレートに登録番号・税率の記載があるか
・仕入先がインボイス登録済か、最新の情報を管理しているか
・帳簿の内容が税率ごとに集計され、整然と記録されているか
・消費税の納税資金が適切に管理・予測されているか
・業務の中に手間や混乱が残っていないか、仕組みで補えているか
今回のまとめ

インボイス制度は、単なる請求書の形式変更にとどまらず、事業者の実務、経営、そして取引の在り方にまで影響を与える制度です。
制度開始から2年が経過した今「これで合っているだろうか」「知らずに不備があるのでは」といった不安をお持ちの方も少なくないかもしれません。
だからこそ、今このタイミングで一度ご自身の事業の制度対応状況を見直し、必要な整備や改善を検討されることをおすすめいたします。
課税事業者となったばかりの方はもちろん、すでに課税事業者である方にとっても、制度対応は「完了」ではなく「継続する運用」です。制度の趣旨を理解しつつ、補助制度や我々専門家の支援も活用しながら、より安心・確実な経営体制を整えていきましょう。
当事務所でも、インボイス制度や消費税の実務についてご相談を承っております。些細な疑問やお困りごとでも結構ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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