円安の今だから気を付けたい外貨の相続
内山公認会計士事務所の内山でございます。
今月も相続対策のお役に立つ知識を、専門家としての立場から分かりやすく解説させていただきます。
ここのところ為替市場では大幅な円安に振れており、24年ぶりの円買い介入が行われるに至りました。円安・円高について基本的なことは皆さんもご存知かと思いますが、日本に住んでいる方が外貨を相続することになった場合、どのように遺産を計算するかはご存知でしょうか?
今月の相続コラムでは「円安の今だから気を付けたい外貨の相続」と題し、相続財産の中に外貨があった場合はどうなるのか? について解説して行きたいと思います。日常的に米ドルやその他外貨をお使いの方、外貨預金をしているという方は必見の内容ですので、どうぞ最後までお付き合いください。
目次
まずは日本円に換算する

亡くなった方の相続財産はすべて亡くなった時点においていくらの価値があったのか? を算出する必要があります。これは外貨だけではなく、不動産にも同じことが言えますが、外貨の場合は国税庁のホームページに次のような記載があります。
相続税や贈与税を計算する場合の外貨は、邦貨に換算する必要があります。
この場合の邦貨への換算は、原則として、納税義務者の取引金融機関が公表する課税時期(相続または遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)またはこれに準ずる相場により行います。
対顧客直物電信買相場とは、金融機関が顧客から外貨を買って邦貨を支払う場合(顧客側にとっては外貨を邦貨に交換する場合)の相場をいいます。課税時期にその相場がない場合には、課税時期前の相場のうち、課税時期に最も近い日の相場によります。
例えば、10,000米ドルを相続した場合で、相続開始の日の相続人の取引金融機関が公表する対顧客直物電信買相場が1米ドル当たり82円であった場合には、82万円で邦貨換算されることになります。
(出典:国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4665.htm)
要するに相続財産として外貨を日本円に換算するためには、相続する方が利用している金融機関のレート(TTB)を用いて計算するということです。
そして、いつ時点のTTBを用いるかという話ですが、これは相続開始日が適用されます。もし、為替相場がお休みの日に亡くなってしまった場合などは、その前の最も近い日のTTBが適用されます。
TTS・TTM・TTB
先ほどから登場しているTTBという言葉ですが、これは為替レートの一つです。TTB以外にTTS、TTMがありますので少し解説します。
TTMとは対顧客電信相場仲値のことを言います。
一般的には「仲値」と言いますが、金融機関がお客さんと外国為替取引を行うときの当日受け渡し用の基準相場です。ちなみに、2022年9月28日時点のTTMを見てみると、みずほ銀行のレートで米ドルの場合は144.76円となっています。
TTBとは対顧客電信買い相場のことを言います。お客さんが外貨を売るときに使う相場であり、TTMから金融機関の手数料分を差し引いた金額となります。
こちらも2022年9月28日時点のみずほ銀行米ドルレートを見てみると、143.76円となり、TTMとの差額1円がみずほ銀行の手数料であることが分かります。
TTSとは対顧客電信売り相場のことを言います。お客さんが外貨を買うときに使う相場です。こちらもTTB同様に金融機関の手数料分を上乗せした金額となります。2022年9月28日時点のみずほ銀行米ドルレートでは145.76円です。
まとめると、TTBは外貨から日本円にする時のレート。TTSは日本円を外貨にする時のレートとなりますが、仮に2022年9月28日に1万米ドルを持つ方の相続が発生したら、143万7600円の相続財産があるという計算になります。
どこの金融機関のTTBを使うか?

TTBは相続する方が利用している金融機関のレートを使うと解説しましたが、複数の金融機関を利用している場合はどこのTTBを用いればよいのでしょうか?
結論からお話しすると、相続する方が取引している金融機関の中で最も有利なレートを使えばよいことになっています。
先ほど「みずほ銀行のレート」という表現をしましたが、外国為替レートは金融機関ごとに異なります。そして、多くの場合において都市銀行や証券会社は高めの手数料であるのに対し、ネット銀行では低めの手数料を設定しているケースが存在します。
みずほ銀行では1円の手数料が発生していましたが、これがもし50銭の手数料であれば2022年9月28日時点のTTBは144.26円となり、1万米ドルを日本円に換算すると144万2600円です。
ということは、仮にみずほ銀行よりも手数料の低い金融機関で相続財産を計算すると、みずほ銀行のレートを使用して計算した時よりも増えてしまいます。
みずほ銀行=143万7600円
みずほ銀行より50銭安い金融機関だった場合=144万2600円
たった50銭であっても相続財産が増えれば増えるほど、相続する方にとって不利になってしまいますので、どの金融機関のTTBを利用するかは慎重に決定されることをおススメ致します。なお、実際に相続税申告を行う際には、評価の根拠が必要になりますので合わせて注意しておきましょう。
今回のまとめ

相続財産に外貨が含まれている方というのは今後増えて行くことが予想されます。円安がどこまで進むかは分かりませんが、若い方を中心に外貨で資産形成を行う方も増えてきました。
現状日本の法律では外貨で納税することは出来ませんので、相続した外貨は日本円に変える必要があります。また、海外の金融機関に預金等の財産をお持ちの方が申告忘れをしてしまうというケースも存在しますので、外貨が絡む相続の場合は税理士へご相談ください。
当事務所では海外資産の相続にも対応可能ですので、お一人で迷われる前にお気軽にお問い合わせください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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