子どものいない夫婦の相続を考える
内山公認会計士事務所の内山でございます。
今月も相続対策のお役に立つ知識を、専門家としての立場から分かりやすく解説させていただきます。
日本では4月から新年度となります。年度替わりは様々な制度が改定となりますが、今年に限って言えば「相続」の制度改定で目立ったものは少なかったと言えるでしょう。そこで、今月のコラムでは「相続の基礎をもう一度」とし、『子どものいない夫婦の相続』を解説して行きます。
子どもがいない方の場合、法定相続分・遺留分・遺言について子どもがいる方以上によく知っておく必要がありますので、ぜひ最後までお読みいただき相続知識の基礎を深めていただければ幸いでございます。
目次
- ○ 相続人の範囲
- ○ 両親には遺留分がある
- ○ 予期せぬ代襲相続
- ○ 遺言書の作成を
- ○ 今回のまとめ
相続人の範囲

子どものいない夫婦が将来起きる相続を考えるとき、誰に自分の財産を託したいか、遺言書で自らの意思をはっきり残しておくことが大切です。
遺言書がなく、遺産分割協議もできない場合、財産は相続人に法定相続分で引き継がれます。
上図をご覧ください。被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、子どもがいないからと言って、すべての遺産が配偶者のものとなるわけではありません。
子どもがいない場合、被相続人の父母など直系尊属(第2順位)、被相続人の兄弟姉妹(第3順位)の順で、それぞれが配偶者とともに相続人となります。日頃の関係性にも左右されますが、揉める可能性を秘めた相続と言ってもよいでしょう。
もし、配偶者に全財産を相続させたいと考えた場合は遺言書の作成が有効ですが、被相続人の両親が健在である場合、遺留分が発生します。詳しく見て行きましょう。
両親には遺留分がある

遺留分とは「相続人が持つ最低限の相続分」のことであり、これは民法で定められているものです。
上図をご覧いただくとわかる通り、配偶者は必ず遺留分がありますが、被相続人の両親にも遺留分は存在します。
例えば1億円の財産を遺して亡くなった場合。
被相続人の親には1/6の遺留分がありますので、例え配偶者に全財産を相続させる遺言書があったとしても、約1,666万円は被相続人の親が遺留分を請求することが出来るという訳です。
「請求」と書きましたが、正しくは「遺留分侵害請求」と言って、遺留分の権利を持つ方が、相続の開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効により消滅してしまいます。請求する先は先の例で言うと被相続人の配偶者になりますので、トラブルの種にもなりかねません。
遺言書を作成する際は遺留分に配慮した遺産割合を心がけ、無用なトラブルを生まないようにすることが必要です。遺留分につきましては以前にも当ブログで解説しておりますので、詳しく知っておきたいという方は是非ご覧ください。
予期せぬ代襲相続

代襲相続については以前も当ブログで解説しましたが、子どものいない夫婦の場合は代襲相続が発生する可能性が非常に高いと言えます。
上図をご覧ください。
被相続人の両親と弟はすでに亡くなっており、遺されたのは配偶者と妹。そして、弟の子どもになります。この場合、弟が相続するはずだった1/8の遺産は弟の子どもに代襲相続という形で引き継がれていきます。
このケースの場合、もし有効な遺言書があり「配偶者に全財産を相続させる」と記載があれば、兄弟姉妹に遺留分はありませんので、遺言書の通り遺産はすべて配偶者のものとなります。
これも日頃の関係性によりますが、多くの場合配偶者の兄弟姉妹または甥・姪と日頃から相続の話などしていることはレアケースと言えるでしょう。まして、兄弟姉妹との間で生前仲たがいしていた場合などは揉める可能性が極めて高くなります。
また、甥・姪にとって思いもかけない財産が舞い降り、お互い想定していなかった財産移転が起きることもあります。
このように子どものいない夫婦の場合、「代襲相続」が発生するリスクを十分に考え、事前に対策を行っておく必要があると言えるでしょう。
遺言書の作成を

このような意図しない相続が行われないようにするためには、遺言書を作成しておくことで、財産を引き継がせたい人に渡すことができます。
既述の通り兄弟姉妹がいる場合でも、有効な遺言書があれば配偶者に100%財産を渡すことができます。遺留分は兄弟姉妹にはありません。
ただし、夫婦のどちらが先に亡くなるかは分からないため、夫婦それぞれで自分の財産を相手に渡す遺言書を作成しておく必要があります。
遺言書の種類については以前にも当ブログで解説させていただきましたが、多くの方が利用する手段として、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つの方法があります。
前者は公証人役場で公証人が立ち会って遺言書を作成してもらう方法であり、後者は自書で遺言書を作成する方法です。
ちなみに、令和2年7月から自筆証書遺言書を法務局に保管してもらうことも可能になりました。瑕疵のない遺言書を確実に作成したい場合は公正証書遺言とし、自身の意思を伝えることが主な目的であれば、自筆証書遺言で良いかもしれません。自身に合った方法を選択してはいかがでしょうか。
今回のまとめ

結婚や子育てに対する価値観はここ数年で大きく変化してきたように感じます。
20代後半で結婚して、子どもが生まれ、60代には孫がいて…。という昭和の時代であれば当たり前であったことでも、現代では多様な考え方が存在しますので、生涯独身または子どもを産まないという選択肢を取る方も増えてきました。
何が普通であるかを定義する必要はありませんが、自身が選択したライフスタイルを守り、同時に財産をどうして行きたいか考えることは、どのような生活様式を選択したとしても必須であることに変わりありません。
コロナをきっかけにますます多様化して行く生活様式ですが、どうぞご自身の財産をどうして行きたいのか? ということを今一度考えてみてはいかがでしょうか。
当事務所では、電話やメールによるご相談も受け付けておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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