遺贈寄付で社会貢献
内山公認会計士事務所の内山でございます。
今月も相続対策のお役に立つ知識を、専門家としての立場から分かりやすく解説させていただきます。
皆さんはご自身の財産を誰にどのように遺したいかを考えたことはあるでしょうか? 考えたことのある方は多くの場合で、配偶者やお子さんに遺したいと考えたことでしょう。しかし、中には社会貢献のために遺したいと考える方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今月のコラムでは『遺贈寄付で社会貢献』と題して、財産を寄付する“遺贈寄付”について解説して行きたいと思います。遺贈寄付の基本から注意点まで分かりやすく解説してまいりますので、どうぞ最後までお付き合いください。
目次
- ○ 遺贈とは?
- ○ 遺贈寄付をするには?
- ○ 遺贈寄付の注意点
- ・不動産等の遺贈は譲渡所得課税に注意
- ・遺留分には気を付けて
- ○ 今回のまとめ
遺贈とは?

人が亡くなり財産が移動することを「相続」と言いますが、“相続させる”という言い方は法定相続人に財産が移動する場合のみに使う言葉です。上図の様に、遺言によって財産を譲る場合は「遺贈」と言います。遺贈は法定相続人であるか否かを問いませんので、遺言さえあれば誰に対しても自身の財産を移動させることが出来るというわけです。
今回取り上げる「遺贈寄付」は遺贈という手段を使って、国や地方公共団体・公益法人等に、財産を遺言で贈与すること、及び被相続人の生前の意思を引継いだ相続人が、相続財産を贈与することをいいます。
遺贈寄付をするには?

まずは遺贈先の選定からストーします。
新聞、雑誌、TVの報道、ネット情報から社会貢献する団体の活動に触れて支援する法人を探します。
紛争地帯で医療や住居などを支援するNPO法人は、寄付先としてお馴染みですが、最近は博物館や地方自治体の動物園など、親しんだ団体に遺贈する人もいるようです。
寄付は現金のみ受付し、不動産は売却、換金したうえで遺贈を求める団体が多数ですが、不動産を受け入れる団体もあります。
遺贈先が決まったら、遺言執行者を選定して遺言書を作成します。税理士をはじめ、弁護士、司法書士、行政書士など専門家に相談しましょう。遺言は公正証書遺言、または自筆証書遺言を選択できますが、遺贈の場合一般的には公正証書遺言を選択するケースが多いようです。
なぜかと言うと、自筆証書遺言の場合専門家へ依頼した場合を除き書式の確認をしてくれる人はいませんので、万一間違った書式で書いてしまった場合は、せっかくの遺言書も無効となってしまう可能性もございます。
そのため、“遺贈”という自身の意思を成し遂げるためにも書式ミスの可能性がない公正証書遺言が選ばれやすいというわけです。
一点注意していただきたいこととして、公正証書遺言・自筆証書遺言のいずれを選択した場合でも「自身で判断が出来るうちに作成する」ことが条件です。認知症の発症等を理由に、自身で財産に関する判断が出来なくなってしまってからでは遅いですので、遺贈を考えている方は早めに専門家へ相談されることをおススメいたします。
遺贈寄付の注意点

遺贈寄付を行う際注意していただきたい点は自身の判断能力以外にもございます。
遺贈先の団体選定は自身が深くかかわった団体や、ゆかりのある団体。または活動を支援して行きたい団体など、ある程度“想い”を反映させて選択することが可能ですが、「遺贈」を行ったことによって、不動産の譲渡所得税・遺留分という問題が発生してしまう可能性もあるのです。
“想い”が遺された人々にとっての重荷とならないように詳しく見て行きましょう。
不動産等の遺贈は譲渡所得課税に注意

土地や建物、株式など譲渡所得の基因となる財産を法人に遺贈した人には、その財産の取得から遺贈時までの値上り益に譲渡所得税が課されますが、国税庁長官に申請して承認を受けた場合は非課税となります。
ただし、遺贈した人の所得税の負担や、遺贈した人の親族のほか特殊関係人の相続税、贈与税の負担を不当に減少させる場合には、非課税承認は取り消され、遺贈した人、または遺贈先の法人に譲渡所得税が課されることになるので注意を要します。
また、相続人が被相続人の意思を引継ぎ、相続財産を国や地方公共団体、公益法人等に贈与する場合にも相続税を非課税とする制度があります。この場合も不動産等の贈与について譲渡所得税を非課税とするには、国税庁長官の承認が必要です。
いずれにせよ、譲渡所得の課税については財産をもらった側の負担となってしまいますので、事前に換金できるものは換金しておくというのも無駄な苦労を掛けずに済む方法だと考えます。
遺留分には気を付けて

「遺留分」については当コラムでも何回か登場しているので詳細な解説は省きますが、上図の様な家族で遺贈を行う場合、配偶者と子ども2人すなわち相続人に対する配慮が必要です。
仮に遺産のすべてを遺贈してしまうと、遺された配偶者と子どもたちは遺留分侵害請求を起こすことも出来ますので、せっかく実行した自身の“想い”がきっかけとなって、無用なトラブルへ発展してしまう可能性もございます。
上図のケースを例に上げると、仮に遺産が1億円だった場合。半分の5000万円が遺留分となりますので、その部分を配慮した遺言とするようにしておけば、無用なトラブルへと発展する可能性は少なくなると言えるでしょう。
自身の“想い”も大切ですが、相続人への配慮を忘れない範囲での社会貢献を心がけるようにしていただければと思います。
今回のまとめ

先日閉幕した東京2020オリンピック・パラリンピックでも“多様性”という言葉がよく使われておりました。人によって考え方・生き方は様々ですので、「遺贈寄付」という選択肢は、多様性を許容する社会の中で今後増えてくるのかもしれません。
また、お子さんのいない世帯であれば、最後に遺された一人が特定の誰かに財産を渡したい場合も「遺贈」が選択されることにもなるでしょう。
つまり、少子高齢化社会の現代においてますます「遺贈」自体は増えてくるものと予想されます。
寄付をする・しないはさておいても、遺贈には遺言書の作成をはじめとした各種手続きが必要になりますので、「遺贈」を検討されている方はどうぞお気軽に当事務所までお問い合わせください。
あなたの“想い”を伺ったうえで、ベストなプランをご提案させていただきます。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
※なお、当ブログは一般的なケースを元に解説しておりますので、個別のご相談・ご回答を希望される場合は下記よりお問い合わせください。
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