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相続放棄の理由は借金だけではない

こんにちは。

内山公認会計士事務所の内山でございます。

 

今月も相続対策のお役に立つ知識を、専門家としての立場から分かりやすく解説させていただきます。

 

「相続と聞くと財産(遺産)を受け継ぐこと」という認識が一般的だと思いますが、今回はその遺産を受け継がない「相続放棄」について解説させていただきます。

よくあるケースとして「借金が残ったから相続放棄」というものがありますが、相続放棄はマイナスの財産を放棄するためだけに行われるわけではありません。

 

実家から離れて暮らす方や地元以外で生活を築いていらっしゃる方であれば、ぜひ知っておいて頂きたい知識となりますので、最後までお付き合いよろしくお願い致します。

目次

相続放棄とは?

相続放棄とは亡くなった方の財産に関する相続権(受け取る権利)の一切を放棄することです。
亡くなった方の財産をプラス・マイナスに係わらず放棄することになりますので、借金がプラスの財産を上回ってしまった場合などはよく行われます。相続放棄を行うことで、亡くなった方の借金が相続人に引き継がれることは無くなります。

借金を残して亡くなった=相続放棄

という考え方はある意味自然な考え方ですが、中には借金だけが理由ではないこともあります。詳しく見て行きましょう。

実家の不動産を管理できますか?

冒頭お話した通りですが、実家を離れて暮らしている方で今後戻る予定のある方はいらっしゃるでしょうか? 

もちろん人によって千差万別ですので、ゆくゆくは実家に戻って生活したいと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの場合(特に実家が地方であれば)戻ることは無く現在の生活拠点での暮らしを優先することになるでしょう。
そんな中で実家の土地・建物、田畑などを相続した場合その管理を皆さんは行っていくことが出来るでしょうか? 

恐らく大抵の方が「出来ない」と答えるかもしれません。または「他の兄弟に任せたい」と答える方もいることでしょう。このような場合にも相続放棄は有効な手段の一つです。

例えば亡くなった親の財産がわずかな預金と自宅、田畑などであった場合。法定相続分通りに遺産分割を行うと不動産が共有状態になってしまうことはよくあるケースです。兄弟と共有することは珍しくありませんが、世代交代が進むたびに関係性は薄くなっていくでしょうから、ご自身の子どもたちへかかってしまう負担を考えると、相続しない方がかえって得するという場合も多いのです。また、相続問題に巻き込まれたくないといった場合でも相続放棄は有効です。

いずれの場合もご家族の関係性に左右されることではありますが、相続するということは財産が自分の物になる反面、管理する義務も負うということですので財産の種類によっては必ずしもプラスの面だけではないということになります。

農地は要注意

農地を相続することになりそうな方は特に注意していただきたいことがあります。
農地は相続をした時(権利の取得を知った日)から概ね10カ月以内に農業委員会へ届け出を行うことが義務化されています。届け出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料が科されることがありますのでご注意ください。
農地の場所や面積にもよりますが、極端に価値の低い農地やご自身での管理が難しい場合、やはり相続放棄は有効な手段の一つと言えるでしょう。

相続放棄と限定承認

「借金を残して亡くなったが、借金の額がいくらかわからない。もしかしたらプラスの財産よりは少ないかも…」
こういったケースで限定承認という手続きが有効なこともあります。限定承認とはプラスの財産を超えない範囲でマイナスの財産を相続する手続きなのですが、実務上登場することは少ないです。

何故なら相続放棄は一人で出来るのに対して、限定承認は相続人全員が共同で行わなければならないためです。つまり、相続人の中に一人でも反対する人がいれば限定承認は使えません。

相続放棄の注意点

相続放棄にもいくつかの注意点があります。相続関係の届け出は何かと期限の決められている物がほとんどですが、中でも相続放棄は相続を知った時から3カ月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出しなければなりません。
相続税の申告は10カ月ですが、それより7カ月も早く期限が来てしまうので、相続放棄を考えている方は早め早めに動かれることを強くおススメいたします。
相続放棄の期限やその他の注意点についてもう少し詳しく見て行きましょう。

期限は3カ月

「単純承認」=プラス・マイナス両方の財産を相続する
「限定承認」=プラスの範囲内でマイナスの財産を相続する
「相続放棄」=プラス・マイナス両方の財産を相続しない
まず、3カ月以内に決めなければならないことは上記3つの内、どれを取るかということになります。3カ月は熟慮期間と呼ばれる期間ですが、これを過ぎてしまっても「相当の理由」があれば相続放棄を受け付けてくれる可能性はございます。

ただし、「相当の理由」ですので「仕事が忙しかった」「手間だから放置した」というものでは認められない可能性が高いと言えるでしょう。他方、「財産調査に時間がかかってしまった」「遠方に住んでいるため他の相続人の協力を得られなかった」といった場合には認められる可能性もあると考えます。

相続放棄は他の相続人にも伝えましょう

上図のような家族で父が亡くなり相続が発生しました。長男は実家を離れ遠い場所で自身の生活基盤を築いているため、父の財産は母と弟、妹にすべて譲ろうと思い相続放棄を行いました。
プラスの財産だけであれば良いですが、マイナスの財産がプラスの財産を上回っているような場合では、相続放棄を行う前に他の相続人(母・弟・妹)に自身が相続放棄を行う旨であることを事前に伝えておいた方が、後々揉め事になるリスクは抑えられることでしょう。

ちなみに長男以外の相続人も全員相続放棄を行った場合、プラスの財産が残れば特別縁故者(亡くなった方の看護や介護をしていた方)がいない限りすべて国のものとなります。マイナスの財産が残った場合は、債務者(借金であれば借りている人)が消滅しますので、債権者の権利も失われます。

相続財産管理人の選任

相続放棄を行えば相続人ではありませんので財産管理の責任を負うことはありません。
しかし、民法940条には
「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」
と定められており、相続財産管理人が選任されるまでは「自己の財産におけるのと同一の注意」を払い、財産を管理しなければなりません。例えば不動産の管理を疎かにし、建物に何らかの被害があった場合などは債権者から損害賠償請求を受けることも考えられます。

ちなみに、相続人全員が相続放棄し相続人が誰もいなくなってしまった場合は、相続財産管理人が財産を清算します。借金がある場合であれば、お金を貸している人(債権者)が利害関係者として相続財産管理人の申立てを行い、選任されれば残った財産を清算していくことになります。

単純承認に注意!

相続放棄を行おうとしているわけですから、亡くなった方の預金を勝手に引き出して使ったり、土地を誰かに勝手に貸してしまったりということは無いと思いますが、もしこれらの行為を行った場合は「単純承認」したものとみなされる可能性が高いです。

したがって、家庭裁判所へ相続放棄の申述をしたとしても却下される恐れがあります。一度却下されたとしても高等裁判所へ2週間以内に「即時抗告」を行うことは出来ますが、却下されたということはそれなりの理由がありますので、事実関係を精査し弁護士の力を借りたとしても覆すのは難しい場合が多いです。

相続放棄のチャンスは即時抗告があるとは言え一度しかないものと認識していただき、安易な行動を取ることのないようご注意いただければと思います。

今回のまとめ

農地の相続で農業委員会への届け出が必要であると解説しましたが、不動産の場合は相続登記も併せて必要になります。日本では空き家問題(所有者不明の土地や家)が叫ばれていますが、政府としてもこの問題を解決するべく「相続登記の義務化」に乗り出しています。

今国会での法案成立を目指すと新聞報道でもありましたが、相続登記が義務化されると怠った場合10万円以下の過料という行政罰が課せられることになりそうです。
したがって、実家の土地や田畑を相続する気が無い方にとって、今以上に相続放棄は重要な手続きとなってくることが予想されます。

相続放棄最大のデメリットでもありメリットでもある点は「財産を一切受け継がない」ということですので、ご自身にとってどのような選択をしたらよいか熟慮を重ね、ベストな選択をして行っていただければと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

※なお、当ブログは一般的なケースを元に解説しておりますので、個別のご相談・ご回答を希望される場合は下記よりお問い合わせください。

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